世界遺産登録を目指している四国八十八か所参り・お遍路の旅は、国内外からたくさんの人が参加しています。
空海・弘法大師は、お大師様としての信仰的な人気もさることながら、仏教が神道と共に融和的に日本文化の中心を担うようになった歴史的な経緯の中でも非常に大きな役割を担っています。
そんな空海の修行に思いを馳せながら体験・修行していく八十八か所参りは、真言宗の信徒・仏教徒ではなくても人生に一度はと考える方も多いようです。
そこで今回は、私自身の経験を元に時間的・体力的にも比較的余裕がある「車遍路」をご紹介していきます。
※当時の写真を探しながら少しずつアップしていく予定です。
自分の予定に合わせて回れる車遍路は多くの人におすすめ
車遍路のメリット・魅力をまずご案内します。
限られた時間でお遍路できる
私は愛媛の松山から、週末に少しずつ巡りながら約1年をかけて車遍路として八十八か所を回りました。
四国在住というアドバンテージがあったものの、少しずつ自分のペースで巡れるのがやはり最大の魅力です。
長期休暇に遠方から飛行機で来てレンタカーを借りたり、本州から車で来てまとめて回るという方も結構いらっしゃいます。
歩き遍路は体力、時間的な面でハードルが高すぎるかもしれませんが、一度はお遍路をしてみたいという方にはおすすめします。
番外札所や奥の院など空海ゆかりの名所・名刹を自由に予定に組み込める
四国別格二十霊場はもちろん、奥の院、真言宗以外の宗派のお寺、霊峰としても知られる石鎚山や剣山、歴史ある神社など弘法大師空海とゆかりのある名所・名刹がたくさんあります。
移動に融通が利く車遍路では、このようなゆかりの地を巡ってみるのもおすすめです。
四国は温泉がたくさん
四国四県とも、温泉が豊富です。
特に愛媛の松山は有名な道後温泉をはじめ多数の温泉が市内にあります。
車の場合は、寄り道もしやすいのでスケジュールを合わせてぜひ自然のエネルギーをチャージしていってください。
四国は海の幸と山の幸がたくさん
太平洋沿いのカツオや、瀬戸内海の真鯛やタコなど、各県ともに海の幸が有名です。
山の幸も、キウイや栗など季節の味覚がたくさんあります。
定番のみかんは冬場だけでなく実は季節ごとに色々な品種があり、ほぼ年中楽しめます。
讃岐うどん、鯛めし、徳島ラーメン、カツオのたたき、他にもB級グルメとして有名な今治焼豚卵飯、須崎の鍋焼きラーメン、丸亀の骨付き鳥、ちりめん丼、などなど。
ぜひその土地ならではの料理も味わっていってください。
徳島の札所は順番にこだわると意外と大変だった話
徳島は札所同士の距離が近いこともあって、なんとなく地図アプリを眺めていると「はじめのうちは大丈夫そうだな」なんて思ったりします。
ですが実際には、ここよりここを先に行くほうが時間がかからない…みたいなことがあります。
最終的に全ての札所を回るということでマイペースに車遍路を楽しむのであれば、順に回ることに強くこだわらないほうが気分的にも、実際の行程としても楽になるでしょう。
コースの決め方を紹介
実際に回るコースを決めるために役立った考え方をいくつか紹介します。
コースの決め方1:難所対策をする
車遍路における難所は色々ありますが実際に行ってみて思ったことを踏まえて、こういうところが難所だなと感じたところをご紹介します。
この難所をどう乗りきるかで予定を立てると安心できます。
シンプルに危険
ガードレールがない山道など単純に危険な場所がいくつかあります。
限られた時間の中での車遍路は無理をしがちですが、特に冬季や悪天候のときは命の危険があるため勇気をもって賢明な判断(迂回路の利用、ときには中止)をする必要があります。
車幅が狭く離合の難易度が高い
離合が難しい車幅の道を通る必要がある札所がいくつかあります。
ゴールデンウィークやシルバーウィークなど、長期休暇のときなど参加者が多い時期は、運転自体に不慣れな方は気になるかもしれません。
※徳島と高知の札所に多かったです。
きつい歩きが必要
駐車場から本堂までが遠い、すごい階段があるなど、歩く必要がある札所がいくつかあります。
ガソリンスタンドが近くにない
徳島から高知の間など、100km程度は走れるように余裕を持たせて置かないと不安な箇所数か所あるので注意。
地元密着型のガソリンスタンドの場合、日曜日や祝日が休みの場合があります。
コースの決め方2:ホテルや旅館に合わせる
土日や連休のときはホテルや旅館を利用することがあると思います。
予約できるホテルの場所や旅館に合わせて回る順番を調整するというのも有効です。
コースの決め方3:観光スケジュールに合わせる
お遍路に合わせて、その土地の名所をまわったりベイントに合わせるというのもいいですね。
四国は自然が豊かなので、ぜひ季節の変化を楽しみながら素敵な旅を。
コースの決め方4:自分のルールで決める
この場所だけは歩いていく、など自分で決めたルールに従うというのも修行の旅としてよいのではないでしょうか。
車遍路での難所
ここで紹介するのは、自分が車遍路で回ったときに特に印象に残っている難所です。
足止めされるところなので、はじめに確認しておくと安心です。
他の方のブログもぜひ参考にしてみてください。
10番札所 切幡寺
道中の道が細いことで有名。
ただ、車遍路にとっての本当の意味での難所は333段もある階段のほうかも。
12番札所 焼山寺
順路通りに車で進むと、車道が細く険しい山道で非常に大変で危険とも言われる難所。
車遍路の場合は、13番札所の大日寺から焼山寺へと迂回するルートを勧める人が圧倒的で、私も訪れたのが冬場ということもあって迂回路を使いました。
焼山寺は標高が高いこともあり冬は積雪があるため、特別なこだわりがないのであれば迂回ルート(逆順)を強くおすすめします。
迂回ルートを使った焼山寺へのモデルコース
11番札所の藤井寺まで進んだら一度引き返して、17番札所の井戸寺から12番の焼山寺へと進むのをおすすめのコースとしている方が多いように思います。
おそらく、11番まで行ったら一度徳島市街に戻るという前提でしょうか。
自分の場合は、滞在予定日数、その日の残り時間(納経所の時間を考慮してまだ回れるかどうか)、確保できたホテルの場所といった都合に合わせて調整しました。
余談ですけど、こういう予定を考えるのも車遍路の楽しいところです。
24番札所 最御崎寺
23番札所薬王寺からとても距離があり道中に街がなく歩き遍路の難所として有名。
車遍路の場合は、薬王寺から続いて行こうとするとスケジュール調整が難しいのと、これまでの道のように油断しているとお手洗いで困る可能性が少々。
ちなみに四国別格二十霊場の鯖大師が道中にあります。
おもしろい言い伝えがあって弘法大師・空海を身近に感じられるおすすめスポットなので、八十八か所だけという方も移動の休みがてら立ち寄ってみるのもいいかも。
45番札所 岩屋寺
車遍路であっても、駐車場から本堂までかなり長い山道を歩いて登る必要があります。
道自体はよく整備されていて危険はありませんが、一部かなり急な部分を含めて片道30分程度は軽くかかる道です。
※冬場は注意が必要です
60番札所 横峰寺
冬季(12月末から2月末まで)は唯一の車道(有料道路)が通行不能となります。
私はこの60番を八十八か所の最後の締めとして、登山道を使って奥の院まで歩いて登ったので実は詳細を知らないのですが、有料道路であっても道自体が結構荒れているらしく自家用車やレンタカーだと傷が怖いため、参拝用のバスを使うという手段もおすすめされているようです。
※このバスも冬季は運航していません。
※余談ですが、登山道は歩きで行く場合はかなりの難所として知られていて、私は1週間近く筋肉痛が続きました。
まとめ
車遍路は、時間、体力、金銭的な負担が歩きよりも格段に少なくて済むのでとてもおすすめです。
しかも、地域のグルメや歴史ある名所に温泉もたくさん楽しめます。
修行としての八十八か所参りじゃなければダメだという声があるかもしれませんが、日本・和の精神の土台を作り上げた空海に思いを馳せながら、その歴史を経て現代の日本まで育まれてきた自然と文化と食を味わう…と考えると、素敵な旅だと言えるのではないでしょうか。
実際にいろんな方が、それぞれの思いを胸にそれぞれのペースで車遍路を楽しんでいます。
退職後にご夫婦で回っている方から、私のように仕事をしながら週末に少しずつ時間をかけて…という方などたくさんいらっしゃいますので、あなたもぜひ!